WH-1000XM4レビュー

小川 敏一  -  2020年11月9日

SONYの最新型ノイズキャンセルヘッドフォン「WH-1000XM4」と、1世代前の機種「WH-1000XM3」の比較結果をまとめてみる。 以降、WH-1000XM4をXM4、WH-1000XM3をXM3と表記する。

1.外観

XM4もXM3もほとんど変わらない。 イヤーカップは楕円形で大きさにもよるが耳をすっぽりと覆うタイプ。

2.装着感

XM4のほうが少し余裕があるように感じる。 この大きさ、形状のヘッドフォンではどちらも良好な装着感。 XM2からXM3になったときほど劇的に装着感が向上したとは感じなかった。 さすがにφ50mmの大型ヘッドフォンと比べるとやや窮屈に感じられる。

3.操作性

ボタン配置、操作方法は全く同じなので変わらない。

左のハウジングの下側に電源ボタン、モード切替・音声アシスタント呼び出しボタン、3.5mmステレオケーブル接続端子。

右のハウジングの下側にUSB3.0端子。 右のイヤーカップがタッチパネル。ダブルタップで再生・一時停止。上下スワイプで音量調整、左右スワイプで曲の送り戻し。

タッチパネル部分を手で覆うと一時的に害音取り込みモードになり、再生中の音量が下がる。 タッチパネルを操作したときのビープ音が、XM3では「ピッ」という高めの音だったのに対し、XM4では「ポン」という落ち着いた高さになった。

4.ノイズキャンセル性能

自宅において、エアコンの運転音や扇風機の音、テレビの雑音程度なら違いは感じられない。どちらも非常にノイズキャンセル性能が高いと感じた。

地下鉄のホームでは電車の発着信の音はXM4のほうが全体的に消せていたように感じられた。音楽を聴いているとホームに電車が入ってきたことに気づかない可能性がある。

地下鉄でも、XM4のほうが発信してから加速していく時のモーター音や、加速しきった後の走行音でも高域の音をより消せているように感じられた。 ただし、これらは、両者を付け替えて、音楽やスクリーンリーダーの音を流さずに、ノイズに意識を集中しているときに顕著に感じられる。

音量にもよるが、音楽を流したり、スクリーンリーダーでスマホの操作に集中していると、XM4もXM3もノイズはほとんど気にならない。 しかし、同じ音源を聞いた時、XM4のほうがより音量を絞っても聞き取りやすく感じた。

5.遅延

xm4もxm3もaac接続の場合やや遅延を感じられる。 専用アプリを使ってsbc接続に切り替えればBlueToothヘッドフォンとしてはほとんど遅延は気にならない。

さすがに、AirPodsProと比較するのは酷だが、VoiceOverで操作するときも、ただ読み上げを聞くだけならさほど気にならない。 AAC接続だと、わずかな遅延のために、文字入力の際に、何も接続していない状態で入力するときに比べるとミスタイプしやすい。 それでも、数年前のモデルや激安のブルートゥース危機に比べるとかなり良好。

SBC接続にしても遅延が気になるなら、もう無線はあきらめて有線接続するしかないといってもいいレベル。

6.音質

全体的にバランスがよく、かつメリハリがあり、それぞれの音もきちんと分離していると感じられた。 電車に乗っているときや、病院の待合室などでアナウンスにも意識を向けながら音楽や動画を鑑賞する目的であれば音質に不満は全くない。

XM4のほうがより明瞭感やメリハリが増したように感じられたが、ブラインドテストをやったら僕の耳では聞き分けられるかどうか怪しい。

害音取り込みモードにした時には、いかにもマイクで拾った音を流しているという感じの音。ICレコーダーの録音の際の音をイヤホンでモニタリングしているときのような感じ。AirPodsProのほうが自然な感じで聞こえた。

7.アプリで設定できる機能

専用のアプリを使って様々な設定ができる。使わなくても通常使用には問題ない。 アプリはSonyが公式にVoiceOver、TalkBack対応を明言しているだけあってスクリーンリーダーを使っての操作は問題なく行える。

ただし、iOS、android用のアプリしかないので、Windowsで使うときも、いったんスマホに接続しないと設定変更できない。

(1)あだぷてぃぶサウンドコントロール

止まっている、歩いている、走っているなどの状態を感知して、ノイズキャンセルの効き具合を自動調整する機能。 ヘッドフォンを付けたまま歩いたり走ったりすることはないので、この機能は使っていない。

(2)ノイズキャンセルのレベル調整

ノイズキャンセルの効き具合や、声だけをやや強調して取り込むvoiceフォーカス機能がある。 基本的に常に最大レベルで使っているので、こちらもあまり調整しない。

(3)イコライザー

スマホ自体のイコライザーとは別に調整できる。

(4)接続モードの切り替え

音質優先モードと接続優先モードから選べる。 音質優先モードは、スマホが対応している上位のコーデックで接続する。音楽再生の際の温室が向上する代わりに、スクリーンリーダーの遅延が発生する。

接続優先モードは、SBCコーデックで接続する。遅延は少なくなるが音質が下がる。しかし、実際のところ、あまり違いは気にならなかった。 スクリーンリーダーの操作性を重視するなら接続優先モードのほうがいい。

XM4の表示について、バグなのか、接続優先モードにしてもステータスにはAACで接続中と表示された。iOSならまだわかるが、Androidに接続したときもAACと出たので間違いなくバグだろう。

遅延の度合いやら、おそらくきちんとSBC接続になっているはず。

(5)アップスケーリング機能

接続しているヘッドフォンの機種によって名称が異なるが、MP3やAACなどの圧縮音源を機械的にアップスケーリングして、ハイレゾ総統の温室に引き上げるという機能。 ハイレゾ音源を聞いたことがないので審議のほどは定かではないが、正直そこまで違いが若なら買った。

(6)Speek to Chat機能

ヘッドフォンを装着した状態で話始めると、自動的に外音取り込みモードになり、一時停止する機能。 右のハウジングを2本指ダブルタップすることでも機能のオン・オフを切り替えられる。

使いどころとしては、家族や友人など、気心の知れた人に話しかけられた際に受け答えするときだろうか。

実際に機能が有効になるまでに多少のタイムラグがあるのと、話し終わった後に元の状態に戻るのにも時間がかかるので、電車やバスに乗っているときに、話しかけられた際にとっさに受け答えするのにはあまり役に立たないかもしれない。

(7)ヘッドフォンを外したら再生を一時停止する機能

文字通りの機能。 電車やホームで話しかけられたときに便利だと思う。

当然音楽や動画再生の時のみ有効な機能。スクリーンリーダーの読み上げは止まらない。

(8)2台の危機と同時に接続する機能

後から接続した機器の方の音を再生する。 先につないでいた方の危機は、そちらのアプリで切り替えないと音が出ない。スクリーンリーダーでは実質切り替え不可能。

AirPodsProのように、お手軽に接続機器を切り替えることはできない。 スクリーンリーダーユーザーには現状使い道のない機能。

このほかにも、タッチパネルの有効・向こうの切り替え、モード切替・アシスタントボタンの動作の選択、自動電源オフ、ファームウエアのアップデートなどがある。

8.総評

XM4単独で見ると、ノイズキャンセルヘッドフォンとして申し分ない。 ただし、XM3と比較すると、装着感、ノイズキャンセル性能、温室など、それぞれ向上しているのは間違いないが、税別40000円の価格を考えると、すでにXM3を持っている場合、間違いなく買い替えるべきとまでは言えないかもしれない。

もちろん、XM3を売って購入資金にする、XM3をサブ機として家用や別の危機専用として使い続けるという選択肢は大いにありうる。

僕はそのつもりでXM4を買ったので後悔はないが、すでにXM3持ってるけど、買い替えるべきか聞かれたら、とりあえず試聴してから決めることをお勧めする。

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