ジャパンネット銀行の音声読み上げトークンを使ってみた
はじめに
ジャパンネット銀行はインターネットでの取引に特化した銀行で、数年前からソフトウェアトークンを提供してきた。
これは、同行の利用者を対象に配布されているトークンの代替となるもので、キーホルダーのような形状のトークンのディスプレーに表示される数字を読むことのできない視覚障害者が、銀行取引において同等の機能を使用できるようにしたもの。
Windows上で動作するソフトウェアにリアルタイムに表示されたワンタイムパスワード(複数桁の数字)をスクリーン・リーダーで確認して利用できるようにしたもので、希望者に提供されてきた。
そのジャパンネット銀行から音声読み上げトークンが発表されたのは昨年末のこと。 昨年開催されたサイトワールドでインタビューさせていただいたことをきっかけに、この音声トークンを使ってみたいと考えていたので早速利用を申し込んでみた。
申し込みは電話で
同行の視覚障がいのあるお客さまへのページに記載のあったカスタマーセンターに電話を掛けて音声読み上げトークンを利用したい旨を伝えた。
口座番号と本人確認を行った後、音声読み上げトークンは1週間程度でお送りいただけること、これまで使用していたキーホルダー型のトークンは切り替え完了後に破棄してかまわないことを告げられて手続きは終了した。
この切り替え手続きは電話でしか行うことができないが、特に電話でなければできない確認事項はないように感じた。
日中の窓口の営業時間に電話を掛けられない利用者のことを考慮して、可能であればインターネット上でも手続きが簡潔できると良いのではないだろうか。
トークンの切り替え
1週間ほどで手元に届いた音声読み上げトークンには、点字の簡単な説明書きが添付されており、トークンの使い方についての問い合わせ先やホームページのアドレスが記載されていた。 箱の中には長方形の形をした音声読み上げトークン本体と、動作に必要な単4電池2本が入っていた。 トークンの左側面にはボリュームを変更するダイヤルと、読み上げ内容をイヤホンなどで確認するときに使用する3.5ミリのジャックがついていた。
事前準備
まず、本体をひっくり返して背面の真ん中あたりにあるスイッチを右にスライドし、その手前にある電池ボックスの蓋を開けた。
このスイッチを左にした状態では電池ボックスの蓋は開かないようになっているが、形状が電源スイッチのようになっているので少し紛らわしいように感じた。
電池をセットした後、本体をひっくり返してボタンがある方を手前に向けて置き、テンキーの0のボタンを長めに押すと、登録に必要なシリアル番号が読み上げられた。
普段スクリーン・リーダーの早めの読み上げ音声を聞いている私にとっては、シリアル番号の読み上げスピードはとてもゆっくりで、かえって聞き取りにくいように感じた。
残念ながらトークンの音声の読み上げ速度は変更することはできないとのこと。自由に速度を変えられないまでも、利用者のニーズに応じていくつかの速度のパターンを準備してもらえるとありがたいと感じた。
利用登録
トークンの読み上げが確認できたら、取引で使用するための利用登録を行う。
基本的にはサイトで紹介されている説明に従って操作すれば問題ないのだが、利用状況に応じて登録手順が異なるため、(私のように)よく読まずに作業をしようとするとなかなか先に進めないので注意していただきたい。
私は音声読み上げトークンを再発行されたお客さま(交換・変更も含む)の利用者に当たるので、視点番号と口座番号、パスワードを入力してログインした。
次に、「各種手続」メニューの「ワンタイムパスワード切替登録」へ進み、キャッシュカードの暗証番号を入力して次の画面に移動した。
そして、次に表示されたシリアル番号と6桁のワンタイムパスワードを入力する画面ではまってしまった。 前述の通り、0を長押しして12桁のシリアル番号を入力したところまでは問題なかったのだがそこから先に進めなくなってしまった。
落ち着いて考えれば何でもないことなのだが、シリアル番号を読み上げた後、ワンタイムパスワードを読ませようとしてすぐにOKボタンを押したのが良くなかったのである。 OKボタンを押して読まれた数字を入力しても、ワンタイムパスワードが間違っている旨のメッセージが表示され、そこから進むことができなくなって何度も最初から処理をやり直してしまった。
結局、シリアル番号が読まれた後に電源が切れるのをしばらく待つか、右上にあるCANCELボタンを押して電源を切手からOKボタンを押せば、ワンタイムパスワードが読み上げられることに気がついたのは、捜査を開始してから30分くらい立ったときのことであった。
ログインパスワードを変更してみた
少し手間取ってしまったが、利用登録を完了できたので、試しにログインパスワードを変更してみた。
ログイン後のWelcome Pageで「ログインパスワード変更」を選択し、現在のパスワード、新しいパスワード、新しいパスワードの確認入力、そしてワンタイムパスワードを入力して変更を行った。
トークンのOKボタンを押し、読み上げられた6桁のワンタイムパスワードを入力することで無事に手続きを完了することができた。
終わりに
登録の時に少し手間取ってしまったが、今ではこの音声読み上げトークンを便利に活用して銀行取引を行えるようになった。
欲を言えば、このトークンは形が大きく、外出先などに携帯するにはやや不便だと感じている。
キーホルダー型やカード型まで小さくしてほしいとは言わないが、可能であればもう少し携帯に便利なサイズの音声読み上げトークンが出てくることを願っている。
また、このトークンにはテンキーがついているが、実際に使用するのは一部のキーだけであり、利用者によっては使わないキーの多さが混乱を招く可能性もある。
次回改良されるときには、必要なキーだけを搭載したよりシンプルなものにしていただければ、より使いやすいものになるのではないだろうか。
とはいえ、これまではワンタイムパスワードを利用するには必ずWindowsが動作しているPCでソフトウェアトークンを利用しなければならなかったことを考えると、インターネットバンキングのサイトにアクセスできる環境さえあれば、利用環境に制限されることなく取引が行えるようになったことは大変うれしい。
最後に、スクリーン・リーダーで内容を確認できるソフトウェアトークンであれば、点字ディスプレイと組み合わせて盲聾者がそれを活用して取引を行うことができたが、現状の音声読み上げトークンは読み上げ音声を確認できる利用者でなければ使用することができない。
本体に点字ディスプレイが搭載できなくても、例えば精製したワンタイムパスワードを利用者が連携したスマートホンなどの画面に表示させるなどすれば、読み上げ音声を聞くことができない人にもワンタイムパスワードを提供できる可能性があるのではないだろうか。