イベント・レポート:第2回支援技術利用状況調査結果報告会

JBICT.Net事務局  -  2024年4月8日

日本視覚障害者ICTネットワーク (JBICT.Net) では、2022年4月から5月にかけて、「第2回支援技術利用状況調査」を実施しました。そして、この調査結果を紹介するオンライン・イベントを2022年10月27日に開催しました。

本レポートでは、このイベントの様子を書き起こしテキストに基づいて紹介します。

なお、当日は質疑応答の時間をイベント終盤で設けましたが、本稿では一部の質問については関連する内容とまとめる形に編集しています。

参考情報として本文中にはグラフを挿入していますが、これらはいずれも調査報告書に掲載しているものです。調査報告書にはグラフ作成に用いた数値も掲載していますので、併せてご覧ください。

オープニング

中根:皆さんお待たせいたしました。これから第2回支援技術利用状況調査の結果報告会ということで始めていきます。

最初に諸連絡ということで、今日はUDトークによる字幕配信をしています。UDトークに関しては今回修正を担当してくださるということで5人の方に協力いただいています。ありがとうございます。よろしくお願いします。

それからお礼ということで、カンパ枠という形でご参加いただいた方20名ぐらいいらっしゃいます。ありがとうございます。こちらは頂いたカンパを基にUDトークとは別に文字起こしを依頼しまして、それに基づいてこの会に関する報告書を掲載しようかなと考えております。これは去年同じような形でやりまして、だいぶ時間がたってしまったんですけど、2022年の春に報告書を公開しています。

Twitterは#jbict2210、22年10月ですね。というハッシュタグでやっております。特に隠さなきゃいけないような情報はありませんので、感想などどんどん書いていただければと思います。

参考:関連ツイートまとめ

中根:それから質問に関してはSlidoで受け付けております。

パネリスト自己紹介

中根:まずパネリストの自己紹介です。

まず僕からですかね。中根といいます。この日本視覚障害者ICTネットワークという任意団体なんですけれども、こちらの便宜上代表ということになっていますけど、あまりそれっぽいことはしてないです。

簡単に僕も含めて今回のパネリストそれぞれが普段どういう環境を使っているかというようなことも交えて、視覚障害当事者の場合は見え方の状態というようなことも交えて自己紹介していきたいと思います。

僕自身は全盲です。コンピューター、IT系のものを使い始めて30年ぐらいという感じで、今は主にWindowsを使っていて、ものによってはサーバー上でこなすこともあったりするので必ずしもWindowsばかり使っているというわけでもないのですけど、主にWindowsですね。

モバイルの環境はiPhoneが7割ぐらい、Androidも3割ぐらいっていうような感じで使っています。

よろしくお願いします。

続いて高橋玲子さん、一言お願いします。

高橋:高橋玲子と申します。

JBICTに入れていただいているんですけど、メンバーとしての仕事をいちばんしてなくて、たまには働けということで今日は出て参りました。普段は玩具メーカーで仕事をしています。。もしそうじゃなかったらきっとパソコンのスクリーン・リーダーとかもそんなにいろんな種類を使っていないんじゃないかと思うんですけども、会社でいろいろなアプリとか、会社のグループウェアを使わなければいけないので、仕方なくJAWSとNVDAとナレーターをとっかえひっかえ日々使っているような状態です。 もしそうじゃなかったらきっとパソコンのスクリーン・リーダーとかもそんなにいろんな種類を使っていないんじゃないかと思うんですけども、会社でいろいろなアプリとか、会社のグループウェアを使わなければいけないので、仕方なくJAWSとNVDAとナレーターをとっかえひっかえ日々使っているような状態です。

iPhoneも日常的に使っていて、iPhoneのほうは楽しいおもちゃというか、楽しいものだったはずなんですけど、1年半ぐらい前にiPhoneも会社から支給されるようになって、iPhoneのイメージが少しつらいイメージになったかな、というこの頃です。でも本当にいろいろなものがスクリーン・リーダーとかVoiceOverとかのおかげで使えるようになって本当にありがたいなということも日々感じているという状態です。

中根:今の2人がJBICTの一応メンバーということになっていますけども、第三者的な視点も入れさせていただきたいということで今回お2人にお願いしています。ということで続いて伊藤さんお願いします。

伊藤:伊藤裕美です。

ロービジョンで中心暗転のために普段はWindowsの拡大鏡とNVDAを使って仕事をしています。普段はWindowsパソコンがメインですね。

あとはiPadも仕事で使っています。自分用のスマホはiPhoneなんですが、会社のスマホがAndroidで、拡大がうまくいかずに四苦八苦という状況です。

私は認定NPO法人タートルという視覚障害者の方の就労を支援する団体の理事に最近なりまして、そちらでタートルICTサポートプロジェクトという、ICTの課題を解決するためのプロジェクトのほうのリーダーもやっています。ということで、今日はよろしくお願いいたします。

中根:よろしくお願いします。僕と高橋さんは基本的に全盲ということで、伊藤さんはロービジョンの方なので、全盲の人同士だとしゃべっていてもちょっと分からないこととかもいろいろあると思いますので、伊藤さんの感想とかご意見とか伺っていければと思います。よろしくお願いします。

続いて伊原さん、一言お願いします。

伊原:伊原力也と申します。

JBICTの非公式サポーターをやらせていただいております。私自身は視覚障害はなくて晴眼者なので、主にJBICTの活動における晴眼者向けの情報保証を担当しておりまして、今回の報告書のグラフを作るみたいなことでお手伝いをしています。

仕事としては今freee株式会社という会計ソフトとかを作っている会社でデザイナーをしていて、あとはその会社含め数社のアクセシビリティーのコンサルタント的なことをさせてもらっています。ということでアクセシビリティーのことがちょっと分かる人枠で今回参加しております。よろしくお願いいたします。

中根:よろしくおねがいします。

国内外の類似する調査

中根:では続いて国内外の類似する調査ということで、これ簡単に紹介しますけれど、実は詳しい話は去年のこの会で紹介しているんですね。ですので、より詳しくは去年の報告会のレポートを見ていただけるといいかなと思います。

同じような内容を調べている調査として、国内では視覚障害者のICT機器利用状況調査という、新潟大学の渡辺先生がやられたもので、2017年のものがあります。

それからScreen Reader User Surveyという、アメリカのWebAIMというWebアクセシビリティー関連の活動を推進している組織がありまして、こちらのほうでやったものが2021年に実施されたのが最後です。

実は我々が去年やった調査よりも後にされた類似の調査というのは少なくとも僕らが知る限りでは無いという状況になっています。

第2回支援技術利用状況調査の概要

中根:調査の概要ですけども、実施期間は2022年の4月27日から5月31日ということで、実際はちょっと遅刻して提出された方もいらっしゃるんですけど、そこまで厳密には実は取ってないです。去年よりも1週間ほど募集開始が遅れてしまったということがあります。これは準備にちょっと時間がかかった関係ですね。

受付方法Webとメール。総回答数266件ということで、これは去年が336件あったので、だいぶ減ってしまったと。70件ぐらい減ってしまったという感じです。

有効回答数が255件。有効回答率は95.86%となっています。ちなみに去年の有効回答率は97.67で、あまり変わらないですね。というような形です。

回答数が減った要因というのは正確なところは分からないのですが、募集期間が少し短かったというのと、各種媒体への告知が去年ほどはいろいろ手広くタイミングよくできなかったということがあるのかな、というふうに思っています。このあと紹介していきますけども、回答の傾向とかは全体としてはあまり去年と大きく変わってはいないと思うので、数が減ったことによって情報の精度がすごく下がったということはないんじゃないかな……ないといいな、と思っています。

回答者の年齢分布

100パーセント積み上げ横棒グラフ:回答者の年齢分布

中根:次のスライドが、回答数の年齢分布をグラフで出しています。

全体としては去年と大きく変わっていないものの、30代が5.47ポイント減った。それから50代は4ポイントちょっと減っている。60代が6.12ポイント増加となっていて、これは、50代の人が急にそれだけ60代になったのかというとそうでもないという気がしているので、ちょっとこの辺がやはりサンプル数の違いとかによるところがあるのかな、というような気はしています。

一番回答者数が多いのは40代、50代というところが多いかなという感じになっていますね。去年と比べるとちょっと高齢の、80代以上、去年もそんなに多くなかったんですが、去年よりちょっと減っているような感じがありますね。

というような感じですけど、まずこれ、パネリスト、特に高橋さん、伊藤さんの周囲の人の感じからしてこの年齢分布ってなんか「だいたいこんなもんでしょ」って感じなのか、ちょっと実態と離れているなって感じなのかとか、どんな印象ですか。

高橋:50、60代が比較的多いっていうのは、例えば普段パソコンでよくメールの読み書きとかSNSとか見ている人が多いのかな、という気はしますけれども、実際にはもっと若い人たちがLINEとかFacebookとかにはたぶんたくさんいて、そういう人たちにも今後うまく回答していただけるような調査の告知の仕方にしていけたらいいのかという印象を持っています。

伊藤:やはり私の周りでも50代の方が多いので、私の周りが、ということはあるかと思いますが、実感とは合っている感じです。

中根:ありがとうございます。調査をまとめたときも我々が話していたところなんですけど、「若い人って本当はもっといるはずだよね」っていうところがあって、おそらく調査がうまくリーチできていないんだろうなというようなことを考えています。ひとつには、このJBICTをやっている人たちが基本的に若くないっていう。なので若い知り合いがあまりいないっていうところが問題なのかなということもちょっと思ったりしています。

障害の状況

100パーセント積み上げ横棒グラフ:障害の状況

中根:では、障害の状況ということで、ざっくり視覚・聴覚、どちらか一方か両方か、というようなところを選んでもらったものなのですけど、そうすると視覚単一障害が244人で95.69%。視聴覚の重複障害が3.53%。

その他、その他っていうのがちょっと謎なんですけど、0.78%。どちらにもチェックされていないような状況の人たちがその他になっています。

聴覚単一っていう方はいらっしゃらなかったですね。視覚・聴覚の単一か重複かっていうのは単純にこの回答から導いています。

あとは、昨年は身体障害者手帳の所持の有無みたいなのも聞いていたんですけども、これはあまり聞いても情報としてうまく生かせないなということで今年はそういうことは聞かずに基本的にご自身がどういう風に認識されているかということで伺いました。

次に、見え方の状態の推測というのがありまして、これは全盲なのかロービジョンなのかというのをすごくざっくり推測しているものです。これは回答者に自己申告していただくという形ではなくて、使っている支援技術から推測しました。

スクリーン・リーダーだけを使っている人はおそらく全盲であろうと。スクリーン・リーダーを使っているかどうかにかかわらずロービジョン者向けの支援技術を利用している人はおそらくロービジョンだろうというように推測しています。

実はスクリーン・リーダーを使っていて、例えば拡大とかそういうのを使っていないけれども、ちょっと視力があるというロービジョンの方とかも全盲として分類されている可能性は十分にあります。が、結果を見ると全盲の人が211人で82.75%。ロービジョンが17.25%ということで、回答の内容とかから考えると、そんなひどく外れた推測ではないのかなというふうに思っています。

ただし、ロービジョンの人って実際はもっと多いはずで、過去の調査とかで見ても、これはあとで出てきますけど、点字が読める人の数っていうのが当時の厚生省かもう厚労省になっていたのかちょっと覚えていないですが、身体障害者の実態調査というやつであるんですけど、これなんかを見ると、全盲だと思われる人の数がかなり少なくて、おそらくロービジョンの人のほうが圧倒的に多いような結果になっていますね。なのでちょっと実態は反映できていないのかなという気がします。

特にこのJBICTの活動だと基本的に全盲の人が中心となってしまっているので、ロービジョンの人たちとの接点が少ないということがあるのでよりこういう結果になってしまっているかなという気がするんですけども、この辺、伊藤さんは普段ロービジョンの方と接することも少なくとも僕らよりも多いんじゃないかなという気がするんですが、この割合とかどんな印象ですか?

伊藤:やはりロービジョンの方のほうが多い感じがしますね。私も統計でロービジョンのほうが多いという、この今示されているグラフの逆の割合かなという感じを受けています。

中根:ということで、いくつか可能性として考えられるのは、ロービジョンの人たちって実は支援技術に頼らなくても使えるような人っていうのもおそらく一定数はいるだろうな、というようなことだったりとか、そういったこともあって、全盲の人に比べると視覚障害者向けの支援技術に関する情報収集みたいなものを積極的にしていないことがあるのかもしれないな、と思っていて、そんな関係でこういった調査でもうまくリーチできていないみたいなことがあるかもしれないと思いました。

Slidoに寄せられた質問

全盲かロービジョンかは現在推測で出していますが、今後調査項目になる可能性はありますか。全盲とロービジョンとで回答傾向が違うのではないかと思われるので、分けて数字が出せると興味深いのではないかと思いました。

中根:これはなかなか難しいんですね。というのは、全盲・ロービジョンというのを明確に分ける、正確に定義するというのはかなり難しくて。

例えば我々が考えるときに、全盲に含めてしまうけれども実際には少し視力はある、というケースがあるんですね。それは文字が読める程度の視力はない、例えば光だけは分かるとか、そういうようなケースなんですけども、そういうような状況の人を全盲と言ってしまうとちょっと違う。じゃあ、ロービジョンとして分けるのかと言うと、使っている支援技術は全盲の人が使うのと同じような感じになるんですね……なる可能性は高いですね。

そうすると正確に現在の視力の状態を書いてくださいというような形で申告してもらうのって結構大変だなと思っていて、あと、集計するのも大変なのもあると思うんですけども。ここは、我々のやっているような調査でそこを厳密にやるのは結構大変かなと思っていて、今のところそういう方向では考えていないです。

パソコンとスマートフォンの利用状況

100パーセント積み上げ横棒グラフ:パソコンとスマートフォンの利用状況

中根:「PCとスマートフォンの利用状況」ということで、こちらは傾向としては去年とほとんど変わっていないですね。

注目してもいいかなというポイントですけれど、PCのみを使っている人が9.8%。スマホとPCを使っている人が87.06%。スマホのみという人が3.14%ということで、スマホだけっていうのが意外と少ないかなという気がします。

100パーセント積み上げ横棒グラフ:年齢別のパソコンとスマートフォンの利用状況(回答割合)

中根:その次が「年齢別のPCとスマホの利用状況」というやつなんですけど、これなんかを見てみると、やはりそもそも若い人が少ないっていうところで、世の中的には若い人のほうがPCを使わずにスマホだけ使っているっていう人が多いのかなという気がするんですけども、この調査の回答者だと若い人が少ないっていうところで、そういうスマホだけを使っているっていう人が少ないのかなという印象を持っています。

とはいえ若い層を見ても、20代、30代だとスマホだけっていう人もちょっといるんですね。なんですけど、その下だとやはり両方使っているとか。結局両方使っている人が多いという状況ではあるので、ここはもうちょっと年齢による影響とかもあるのかなとは思いますけれど、なかなか正確なところは分からないようなところですかね。

Slidoに寄せられた質問

パソコンとスマホの利用状況については、若い年代(十代でも)大半がどちらも同程度使うという回答になっていますが、つまりスマホ優位というわけではない。支援技術という観点で見ると、スマホの支援技術では心もとないから、というのはあったりするのでしょうか

中根:これは僕の推測ですけれども、心もとないというより、結局特に入力するときのこととかを考えると、パソコンのほうが効率が良いというのがまだあるのかな。それから検索みたいな、あるいは文書作成ですかね。そういったことをしっかりやろうと思うと、結局パソコンのほうが楽と感じる。これはたぶん、晴眼者でも視覚障害者でも傾向としては同じなのかなと思うんですけれども。視覚障害者のほうがよりそういうのがあるかもしれないぞ、という気はしています。

個人的にも、スマホでやってもPCでやっても、どちらでもできることがPCでやったほうが早いとか、あるいはより正確にできるとか、そういった印象があるということが少なからずあるのですが、支援技術よりも……まあどうなんでしょうかね。入力のしやすさというのが一番影響しているのかなという気はするんですけども、高橋さんどうですか?

高橋:私の友達で同年代、50代ぐらいの友達の中には、仕事ではパソコンを使っているけれどもプライベートではもうスマホしか使わない、という人も結構実は何人もいたりするんですね。もしかしたら併用している人には、スマホを使う場所や状況と、パソコンを使う状況とを住み分けている人もいるのかな。あと、日常的に同じ家でパソコンを使ったりスマホ使ったりしている人もいるだろうし、併用といってもいろんな併用の仕方があると思うので、その辺りを今後探っていけると、どういうふうにスマホとPCの役割をそれぞれ果たしているのかはっきりしていくのかと思います。

中根:確かに職場と自宅で全然違うというケースはあるでしょうし、同じパソコンでも職場と自宅で使っているスクリーン・リーダーが違う、みたいな回答をコメントで書いてくださった方が去年いらっしゃった記憶があるので、その辺を深掘ると確かに何かちょっと違った見え方になってくるかもしれないですね。

ただ、ロービジョンの人とかだと特にそうなのかという気も若干するんですけれども。スマホのほうが例えば画面のサイズが小さい分だけ画面全体の把握がしやすいからより使いやすい、みたいな感覚を持っている人がいたりとかということが、もしかしてあるのかなという気がしなくもないんですが。伊藤さん、いかがですか?

伊藤:画面全体が見えるからというよりは、ロービジョンの方で例えば最近徐々に悪くなってきて、何かボランティアの支援を受けようというときに、最近はiPhoneから入る方が多いということでそこから入って、やはりパソコンも、みたいな順番が逆になっている方もいらっしゃるかなという印象です。あとは学生さんなんかだと、スクリーン・リーダーまでは使わなくてもiPadで拡大したりして見ているんだけど、就職に関してパソコン使わなければならなくなって、これからどうしましょうみたいな話も聞きますし。まず、だからiPhoneとかiPadありきで、そこからパソコンにいくというのは若い方がそういうケースがあるかなというところです。

パソコンで利用しているプラットフォーム

横棒グラフ:パソコンで利用しているプラットフォーム

中根:続いて、パソコンで利用しているプラットフォームということで、去年とは聞き方を変えたところで、Windowsを使っているのかとか、Macを使っているのか、あともうひとつ、ChromeOSをつかっているのか。あとその他っていうのも入れましたけども、そういったものを選択してもらいました。

複数回答ですので足しても100%にならないのですが、Windowsを使っている人が98.79%ということで、圧倒的な多さですね。macOSを使っている人が8.91%。

ChromeOSが5.67%で、多いと見るべきか少ないと見るべきかなかなか難しいんですけれど、最近ですとGIGAスクール構想とかそういうので、学校でChromebookを配っているケースがよくあったりするので、その関係で特に若い人とかで使っている人が多いかなと選択肢に入れてみたんですけど、繰り返しになりますけど、若い回答者があまりいないのでそこはあまり響いてこなかったのかもしれないですが、ただ一定数はいるということが分かりました。

今回ここで登壇している伊藤さん、高橋さん、僕は基本的にはWindowsっていうことでやっていますけども、僕はMacはごくまれにちょっと試してみたいっていうので使う程度なんですけど、伊藤さんの周りの方でロービジョンの方でMacを使っている方っていたりしますか?

伊藤:いらっしゃいます。

中根:そういう方って基本的にはVoiceOverを使って拡大もしてっていう感じなんですかね?

伊藤:そうですね。全盲の方でもMacを使ってらっしゃる方もいますけど。

中根:そうなんですか。これはよく言われることですけど、MacとWindowsで比べると、漢字の詳細読みの機能のところにちょっと難があるというのがある種定評になってしまっていて、それでなかなか全盲の人でMacを使うっていう方向に行かないっていうのがこれまでの流れとしてはあるんですけども、そういう不便さみたいな話っていうのは特に聞かれないですか?

伊藤:全盲でMacを使っている方はかなりのスペシャリストみたいな方なので、その辺をうまくやっているんじゃないかと思うんですけど、ロービジョンの方だと、目も使いながらということで併用であれば使えるのかな、という感じはします。

中根:ちなみにそのMacの漢字詳細読みの話は最新版だと、ちょっと改善しているといううわさを聞いたことがあるんですけど、僕はまだ試す機会に恵まれていないという状況です。

伊原さんも何か感想とか、質問とか、あったら適当に割り込んでくださいね。

伊原:はい。これはmacOSシェアって、この結果でもいわゆる一般の統計でもそんな変わらないので、まあそういう感じなのかな、という。別にデザイナーとかやっているとMac前提みたいな感じがするんですけれど、世間的には1割みたいな。体感としてはそういう感じですね。

それと、Twitterを見ていたら「ChromeOSのスクリーン・リーダーって何」っていうようなお話がありました。

中根:あとでふれようと思っていたんですけど、せっかくなのでここでふれます。

ChromeVoxというのがあって、ChromeOS、Chromebookとかはデフォルトで搭載されています。ブラウザーのChromeにも拡張機能としてChromeVoxって追加できて、そうするとChromeの中だけはほぼ同じ挙動になるっていう仕組みがあります。

ちなみに、僕は安いChromebookを買ってきて試したんですけれども最初、日本語はちゃんと読み上げなくてひどい目にあいましたけれども、どうにかこうにか使えるようにして、使えるようになったところで安心してGoogle Docsでどうでもいいドキュメントを1個作って、それっきりしまってしまいました。

ただ、あれも、漢字詳細読みの問題はやはりあると思うので普段使うってなかなか難しそうなんですけれども、英語だけだったらたぶん、特にGoogle Docsとかその手のものを中心に使うのであれば。あとはGmailとか、結構視覚障害者でも使えるんじゃないかな、という印象を受けています。

伊原:ありがとうございます。

Slidoに寄せられた質問

Macを使っている全盲の方は今のMacでできることしかしていないか、Windows との併用ではないでしょうか。Windowsでできること全てができなく ても、スマホプラスアルファのユーザーは困らない可能性があると思います。

中根:これはその可能性はあるかなとは思いますね。それは「プラットフォームの併用状況」というところで軽く調べて分析はしていて、報告書には書いてあるのですが、WindowsとmacOSの併用状況というのがありまして。

Windowsのみを使っている人が225名、91.09%。macOSのみを使っている人が3名、1.21%。WindowsとmacOSを併用という人が19名、7.69%ということで、この辺がご指摘の通りで、併用している人たちというのは、それぞれでできることをやっている、それぞれでより得意なものに活用しているというようなことがあるのかなと思います。

主なパソコン向け支援技術の紹介

中根:では、続いて「主なPC向け支援技術の紹介」です。

スクリーン・リーダーがあります。スクリーン・リーダーというのは今更ですけれども、画面上の標示を音声、もしくは点字にしてくれるソフトウェアです。標準搭載されているものもありますし、サードパーティー性のものがある場合もあります。

Windowsでは、このあと触れますけれども、シェアが一番大きいPC-Talkerという、これはサードパーティーの売り物です。

それからJAWS for Windowsという、これも売り物です。

NVDAというオープンソースのものですけれども、これはサードパーティー性のもので無料で利用できます。

参考:日本国内では主にNVDA日本語版が利用されています。

中根:ナレーターというのがMicrosoftが作っているもので、どのWindowsにも標準搭載されているものです。主にこの4種類がWindowsのスクリーン・リーダーです。

ChromeVoxは、ChromeOS用のスクリーン・リーダーです。

それからmacOSの場合はVoiceOverという。macOS VoiceOverというふうにあえて書いていますけど、というものがあります。これはなぜmacOS VoiceOverって書いてあるかというとiOS向けのVoiceOverというのも、スクリーン・リーダーがあるのですが、これは同じVoiceOverという名前なんですけど全く別物なので、これは明確に区別しないといろいろややこしいということでmacOS VoiceOverというふうに書いています。

ロービジョン向けの支援技術としてはWindowsで動く、ZoomTextという売り物のソフトウェアがあります。それから、それ以外にOSに搭載されている拡大鏡とか、表示の変更というのは例えば白黒反転ですとか、そういった配色の変更です。そういったことがOSの機能としてできるようになっています。これはMacでもこういった機能はあります。

パソコンで利用している支援技術

横棒グラフ:パソコンで使うことがある支援技術(複数回答)

中根:では、「PCで利用している支援技術」。これ、複数選択してもらった結果です。

まず、「その他」というところです。表示フォントの変更とか、ブラウザーに搭載されている読み上げ機能とか、あるいはブラウザーとかに搭載されている拡大機能。そういったものを書かれている方でした。推測するに、普段は比較的画面を見ることができている状態のときに補助的なツールとしてこういったものを活用されているのかな、というような印象を受けています。

前回との比較という意味でいうと、ナレーターを選択した人が6.51ポイント増加、MacのVoiceOverは6.29ポイント減少というのがちょっと目立っているかなという気がします。これはナレーターってもともとはそんなに使えるものと思われていない節が、特に当事者の間ではあって。にもかかわらずちょっと増えているというのはちょっと面白いなと思っているんですけれども、これはツジさんが言っていたことなんですけど「ナレーターは結構、Microsoftが頑張ってセミナーとかで紹介したりとかもしているので、そういったことで多少情報が広まったとかいう側面もあるのかもね」って言っていました。

YouTubeでそのセミナーの動画とかも公開されているということだそうです。ということですけど、ナレーターに関しては、高橋さんも使うってさっきおっしゃっていましたよね。

高橋:はい。「困ったときのナレーター」っていう感じで。

普段はJAWSを私は主に使っているんですけれども、起動しているはずなのにしゃべらないとか、わけの分からないことになったっていうとナレーターを立ち上げるとナレーターは大抵しゃべるので、本当に今やなくてはならない、苦しいときにお助けみたいになっている気がします。

意外にちゃんと読むんです。画面の状況というか、どこにどういうアイコンが……「どこに」は分からないですけど、どのエリアにどのアイコンが並んでいるとか、これはまだ起動しているんだとか、していないんだとかいうこともナレーターで読むことができるのと、それからサインインする前にナレーターを自由に起動させたり終わらせたりできるので、その辺りもすごく便利だなというふうに日常的には感じています。

中根:しかし、常に使うような選択肢にはなりえない?

高橋:常にはちょっと。あまりにも読まないですね。やはりNVDAとかJAWS、大御所は強いなとは思います。

中根:たぶん、それが結構、ナレーターを使うって回答した人は大体、同じような印象なのかなと思います。僕もたぶん似たようなところ。ただ、実はナレーターは結構よくなってきていて。普段使いはちょっと僕もつらいかなと思うんですけど、それはたぶん、実際には思ったよりもちゃんと読むはずなんだけど、単に慣れていないというところが大きいのかなという気もしていますが、それを検証するためにずっと使ってみるとかの勇気はまだないかな……という感じです。

最近だとナレーターもそうですけれども、Windowsの拡大鏡に読み上げの機能が付いたりとかっていうこともあったりするので、ロービジョンの人でも拡大鏡の読み上げだったりナレーターだったりを使っている人がある程度はいるのかな、という気もちょっとしています。伊藤さん、その辺はいかがですか?

伊藤:Windowsの拡大鏡の読み上げはあまり周りで使っているという話は聞いたことがないですけど。私もナレーターは使うことはあっても、Windowsの拡大鏡はあまり使わないかな。

中根:ナレーターはどういうときに使われます?

伊藤:ナレーターはやはり、高橋さんと一緒で「困ったときのナレーター」です。なのでNVDAがうまく読まないときとかはやはり使いますね。最近はちょっと違う音声エンジンを使っているんですが、ちょっと前まではワンコアを使っていてワンコアで変な読み方をするときはナレーターでもそうなのかなとか確認するのにやったりとか、ということをやったりしています。

中根:困ったときのナレーターというと、ナレーターがすごい高機能っぽく……知らない方にとっては聞こえてしまうかもしれないですけど、なかなかそこの感じを伝えるのが難しいんです。ほかのスクリーン・リーダーが黙ってしまったときに立ち上げると、取りあえずそのスクリーン・リーダーを復活させるところぐらいまでは全然、余裕でできる。そういう感じですよね。

伊藤:そうですね。あと、人のパソコンを借りるときとか、取りあえずスクリーン・リーダー使いたいときに使うとか。

中根:そうですね。ややこしい作業はできないけど、例えばファイルのコピーとか、それぐらいだったら全然、余裕でナレーターでできるからとか、そんな感じですかね。イメージとしては。

伊藤:そうですね。でも、やはり対応していないアプリが多いので。Microsoft製品だと結構読んでくれるんですけど、それ以外になると全然太刀打ちできないという感じなので、補助的に使うって感じです。

中根:たぶん、大体ナレーターを選択されている方は似たような感覚。使える使えないっていう認識の程度には差があるような気がするんですが、似たような感じかなと思います。

パソコンで主に使う支援技術

100パーセント積み上げ横棒グラフ:パソコンで主に利用している支援技術(単一選択)

中根:では、「主に使う支援技術」ということで。さっきは複数選択だったんですけど、一番中心的に使っているものを選んでくださいということで選んでいただいたものです。

前回の調査と比較するとPC-Talkerの人が4.77ポイント減少、NVDAの人が5.95ポイント増加。macOS VoiceOverが2.08ポイント減少というようなことが手元のメモには書かれています。それ以外にはあまり大きな変化はないかなというところなんですけれども。

ということで分母が違うということもあるんですが、PC-Talkerが思ったより減ったというのがちょっと意外な印象は受けています。ただ、PC-Talkerがサブスクリプション型の課金方式に変わったということと、それから例えばOSを乗り換えた、例えばWindowsの古い……サポートされなくなった8……8はサポートされているのかな? 分からないですけれども、それぐらいの古いやつからWindows10とか11とかに上げたっていう状態になると、古いPC-Talkerがそのまま使えないっていうようなことがあったりするので、そういったことが影響して減ったりすることもありうるのかなとは思います。その分なのかどうかNVDAはちょっと増えているなというような印象です。

年齢別に見たパソコンで主に使われている支援技術

100パーセント積み上げ横棒グラフ:年齢別のパソコンで主に使用している支援技術(回答割合)

中根:次が「主に使う支援技術」を年齢別でちょっと見てみたものです。

これは前回と傾向は変わらなくて、若い人のほうがNVDAを使っている人が割合として高い。それからPC-Talkerは年齢が高いほど利用している人が多いということで、これはおそらく最初に習得したものを使い続けているケースが多いのかなということと、それから若い人の場合は、特に新しいサービスとかを使ってみたい、あるいは使わざるを得ないみたいな状況になって、それでPC-TalkerでうまくいかなかったからNVDAで試してみようみたいな人もいて、そういうことをやった結果としてNVDAに定着したみたいなケースがあるのかな。なんてことを思ったりしています。

高橋さんはPC-Talkerは使っていないんでしたっけ?

高橋:私はPC-Talkerは使っていないので、なんとも言い難いです。

でも、NVDAが本当にどんどん3カ月に1回ぐらいアップデートされているので、最新のアプリとか最新の方式にすごくついて行っている感がある。もちろんPC-Talkerも今、サブスクリプションになったのでそうなんだと思うんですけど、これは「PC-Talkerを買うまでのつなぎとしてNVDAをしょうがないから使おうかなって思ってみたらNVDA、意外にいけるじゃん」みたいな。「PC-Talker、この前は読まなかったのに、NVDAだとこのアプリ使えるし」みたいな経験をしたりとかしてNVDAに定着する人……さっき中根さんも似たようなことをおっしゃいましたけど、かなり多いのかな。私自身も日々NVDAってすごいなというのを実感が深まっている感じがするので、この結果というのはやはりそういうところからのものじゃないかなと思います。

中根:あと、ロービジョンの人の場合とかだと、ナレーターよりも高機能なものがほしいけど、画面を見ながら使うっていうようなケースだとNVDAなんかはちょうどお金もかからないし、機能的にもまあまあしっかりしているし、というようなことでちょうどいいようなところがあったりするのかなという気もします。実際にNVDA使っているロービジョンの方っていうのも一定数いるような感じですか、伊藤さん。

伊藤:そうですね。私自身がまんまとそのパターンというか、取りあえずNVDAを試してみたらと勧められてつなぎでと。さっき高橋さんがおっしゃっていたまんまです。やってみたらこれでいけてしまったみたいな。今更、会社に「買って」とも言えないみたいな感じでNVDAをそのまま使っているんですが。

最近スクリーン・リーダーを教えるのをお手伝いしたことがあって、そのときにPC-Talkerの良さっていうのに気付いたと言いますか。例えばWordの細かい書式の読み上げとかはPC-Talkerは対応しているんだけれどもNVDAにはないとか、そういう特徴というか、得意・不得意があるんだなというのをすごく感じて。何をやるかによってスクリーン・リーダーの選択というのはあるのかなと思っています。

中根:そうですね。ありがとうございます。

Windowsを利用している場合の支援技術の併用状況

中根:続いて「Windowsの支援技術の併用状況」。

Windowsを利用していると答えている244名についてなんですけれども、86.48%の人がスクリーン・リーダーのみを使っているという回答。9.84%の人がスクリーン・リーダーとロービジョン向けの支援技術を併用している。スクリーン・リーダーを使わずにロービジョン向けの支援技術だけを使っているという人が2.46%ということで、これはやはり全盲とロービジョンの割合が実態にあまり合っていない感じがするのですけれども、その割合で見ると大体、こんなもんかなという印象を受けています。

macOSを利用している場合の支援技術の併用状況

中根:続いて、同じ分析をmacOSに関してもしているものです。

macOSはサンプルが本当に少なくて22名なので、これでどれだけ有効なことが言えるのかというのはだいぶ怪しいですけれども、スクリーン・リーダーと書いてありますけれども、macOSのVoiceOverだけを利用している人が22名のうちの14名、63.64%で、4名、18.18%の人がスクリーン・リーダーとロービジョン向けの支援技術を併用しています。1名、4.55%がロービジョン向けの支援技術のみを利用している。

この数で比較するっていうのがどれだけのものかって感じもするんですけれども、やはりmacOSのほうが、全盲の人よりもロービジョンの人が使っている率がもしかしたら高いかもっていう気がなんとなくする。例えば、VoiceOverだけを使っているという14名の人も、実際にはロービジョンなんだけれども基本的にはあまり見ていなくて、基本的に支援技術としてはVoiceOverだけを使っていて、本当に必要なときだけ画面を見るみたいなケースとかもたぶんあるんじゃないかなという気がするので。もちろんそれはWindowsにも起こりうることなんですけれども、先ほどもちょっとあったようにMacのほうが基本的にはロービジョンの……詳細読みの問題等もありますので、ロービジョンの人が多いのかなという印象があって、それともちょっと合った結果なのかなという気はしています。

Windowsで利用しているスクリーン・リーダーの数

100パーセント積み上げ横棒グラフ:Windowsで利用しているスクリーン・リーダーの数

中根:「Windowsで利用しているスクリーン・リーダーの数」ということで、2つ以上選んだ人が158名、67.23%って書いていますね。

1つしか選んでいない人というのは思ったよりも少ないって感じだったんですね。1種類は77人で32.77%ということで、大体3割というような感じです。

複数と1種類ってことで言うと、一番多いのは、1種類と、2種類がそれぞれ32.7%で同じなんです。で、3種類使っている人が29.36%ぐらい。4種類使っている人というのは5.11%いる。

ということで、1種類で間に合っている人も3割ぐらいはいるわけですけど、それ以外の人たちが結局併用して、それこそさっきのナレーターの話じゃないですけども、併用して使わないといろいろ対応できないのが現状なんだなということが見てとれます。

Windowsで単一のスクリーン・リーダーを使っているというケース

横棒グラフ:Windowsで1種類のスクリーン・リーダーのみを利用している人の利用製品

中根:で、「Windowsで単一のスクリーン・リーダーを使っているというケース」で、これはPC-Talkerが圧倒的です。これが去年もそうだったんですけども、傾向は去年と本当に変わらなくて、JAWSだけを使っているという人は1人もいない。

NVDAだけを使っている人も5人しかいない。なんだけども、PC-Talkerだけを使っている人だけは71人もいるんですね。ちなみにナレーターだけを使っている人は1人しかいないという状況なので、ナレーターをどういうふうに使っていますかという話と併せて考えると納得の数字かな、という感じもあります。

実際僕もNVDAを中心に使っていますけども、NVDAとナレーターを2種類使うと。この回答でいうとそういうことになるんですね。なので、これも結構納得感があるという数字かなという気がしています。

ちなみにJAWSって、お値段もかなりのものなんですけども、機能的にもかなり高機能。これは客観的事実として間違いないと思うのですけども、実際JAWSを使っているNVDAもナレーターも併用している高橋さんは、JAWSに対してどんな印象をお持ちですか?

高橋:本当に高機能で、JAWSにしかできないことってやはりあるんですよね。ただ、JAWSって中根さんもおっしゃったように、やっぱりかなりの高額なので、どうしてもJAWSを使わなければできないことがある、という環境にある人しかなかなか現状では購入していないんじゃないかと思うんです。そういう人っていうのは一般の、どんどん変なふうにアップデートされるアプリがあったりとか、勝手に新しいアプリが導入されちゃったりとか、そういう環境にあって、「JAWSでしかできないことあるし」って言って高額でJAWSを買って使っているんだと思うので、そういう中でやはりJAWSが思い通りに読み上げてくれない時に他の物も併用するという方法で、なんとか切り抜けているんじゃないかなと思うので、なんかJAWSが高い割にいまいちということよりは、その高いJAWSを買わなければ乗り切っていけない環境にいるとJAWSでも読めないものもあって、他のものにも頼っていろんなものを併用しているという、そんな感じじゃないかと思っているんですけども、どうなんでしょうね。

中根:そうですね。あとはやはり毎年バージョンアップしていかないといけないというところは、ちょっと厳しいところありますよね。

高橋:私も職場で、毎年はちょっとやはり言えなくて、どうしようもなく2年とか3年にいっぺんくらいにどうしてもなっちゃう、と先程も言ったんですけど、NVDAのほうが読めるものがちょっと増えたりとかする場合もあって。なんかJAWSももちろん手間もかかっているし、元も高いし、ローカライズも大変だし、っていうのもすごくわかるんですけれども、なんとかしてもうちょっとみんなが使えるような提供方法というのがないものかなと。せっかく良いものなので。とは思いますね。

中根:あとはやはり、僕も昔JAWSを中心に使っていたんですけど、昔は2年か3年に1回JAWSをバージョンアップしていればだいたいなんとかなったという感じだったんですけど、今Windowsそのものもそうだし、ブラウザーとかもそうなんですけど、そっちの更新が早いので、3年に1回JAWSをアップデートだとちょっと厳しいかなという感じは……。ていうか、だいぶ厳しいかなという感じはあるので。

高橋:厳しいです。

中根:なので、そこのバージョンアップができるかのところも影響していそうな感じはありますね。

Windowsで使われることが多いスクリーン・リーダーの組み合わせ

横棒グラフ:利用している人が多いWindows用のスクリーン・リーダーの組み合わせ

中根:続いては、「Windowsで使われることが多いスクリーン・リーダーの組み合わせ」というやつで、PC-TalkerとナレーターとNVDAというのが一番組み合わせとしては多くて、45名28.48%となっています。

でこれ上位5個の組み合わせを報告書では書いているんですけれども、1位から3位までが「PC-Talkerとなんとか」なんですね。で4位はちょっと飛ばして5位もPC-Talker・JAWS for Windows・NVDA・ナレーターの4種類ということになっていて、結局なんかPC-Talker単一で使っている人が多いんだけれども、PC-Talkerと何かと組み合わせて使っている人も多いという、そういう結果が見えました。

ちなみに今飛ばしましたけど、4位はJAWSとNVDAとナレーター、まあPC-Talkerを使っていない人ということですね。ただこの辺になってくると数がそんなに多くなくて、12とか。3位で18。1位と2位が多いんですね。

1位というのがPC-Talker・NVDAとナレーターで45名。2位というのがPC-TalkerとNVDAというのが42名。なので、これが一番ある意味ポピュラーな組み合わせなのかなというふうには思います。

パソコンで点字ディスプレイを使っている人の数

100パーセント積み上げ横棒グラフ:パソコンでの点字ディスプレイ利用状況

中根:次が「パソコンで点字ディスプレイを使っている人の数」ということで、点字ディスプレイの利用者数としてはだいたい30%くらいということですね。

その一方で、平成18年ということでだいぶ前の調査ですけど、身体障害児・者実態調査結果というやつでは点字が使える視覚障害者というのは12.7%いるので、それよりは乖離しているなという印象なんですけども、これもロービジョンの人がどれだけサンプルに含まれているのかで、ずいぶん変わってきてしまっているんだろうなという気がします。

つまり我々の調査だとロービジョンの人がやはり回答者に少ないということ、一方でこの身体障害者の実態調査の方はロービジョンの人ももちろん入っているという状態なので、そこで母集団が違っているというようなところが大きいのかなという気がしています。

パソコンで使われているWebブラウザー

100パーセント積み上げ横棒グラフ:パソコンで利用しているWebブラウザー

中根:続いて「PCで使うWebブラウザー」ということで、ここで去年から一番大きな違いというのが、Internet Explorerの利用者割合が9.21ポイント減。2.83%まで下がりました。これ、9.21ポイント減ということですから、去年は12%近かったんですね。その一方で、Chromeの利用者が12.29ポイント増えましたということで、これが一番大きな違いかなというところです。

あと、NetReaderというブラウザーがこの数値の中で出てきていますけども、普段あまり視覚障害系の支援技術に接する機会がない方だとご存じないかもしれないので、簡単に説明しておくと、これはPC-Talkerと一緒に使うためのWebブラウズの補助ツールというようなもので、元々は、IEの上にユーザー・インターフェイスを被せるような構造だったんですけど、今はChromeが裏で動いている。Chromeのエンジンを使って、Webページを取ってきて、解析して、それをPC-Talkerで読みやすいような形でユーザーに提示する、というような機能ですね。あとは、検索だったりとかよく使う機能が使いやすいような形のインターフェイスで提供されているという、そういったソフトウェアです。これはPC-Talkerを使っている人だとやはりユーザーが多いというのがNetReaderということですね。ということでこれでIEのユーザーが減ったぶんだけそのままChromeにいったんだなというような印象ですけども、高橋さん、普段は何を使っていますか、ブラウザーは。

高橋:家では、古いJAWSとWindows7のパソコンがまだ生きておりまして、Internet Explorerが古いJAWSでは一番気持ちよく動く。余計な事を読まないし、程よく読み上げも良い感じで読むので、IEを使っております。

会社でも実は1年くらい前までか、もうちょっと前かもしれないですが、IEでした。それが今Edgeに変わって、Edgeでも新しいJAWSで……でも時々実はEdgeだと開いても読まないことがあって。あと、読み飛ばしたい所を指定して読み飛ばせるという機能がJAWSにはあるんですけど、それがEdgeではできないとか。やはりInternet ExplorerのほうがJAWSと相性良かったなって日々、思うんですけれど、今職場でEdgeを使っていて、そんなにEdge悪くないなと思っていて、家でも使いたいなと。

Windows10のもう一つあるパソコンではEdgeを使ったりしているんですけど、古いJAWSが動いてるパソコンではいまだにIEを動かしていて。やはり慣れというか、ちょっとした読み方の癖とか、ちょっとした操作法とかがなかなか。特に歳をとってくると、新しい方法に適応するよりも、古いものにしがみついてしまうということがあるなというのはちょっと思っていて。皆さん、IEで開けないページが増えたというのもあると思うんですけど、Chromeにちゃんと移行されていて偉いなと思いました。

中根:確かに古いJAWSが使えている環境だと、IEが一番相性が良いのは間違いないかなとは思います。ただ、古いJAWSでEdgeを使おうとするとたぶんつらい。

高橋:うん。つらい。使えない。

中根:使えないよね、たぶん。

高橋:そうですね。

中根:伊藤さん、ブラウザーはいかがですか?

伊藤:私は、Chromeが8割でEdgeが2割という感じですね。で、Edgeを使うときって、Edgeの読み上げ機能を使ったりするときに使うことがありますね。

中根:使う支援技術として、「その他」のところでEdgeの読み上げ機能をあげている方が何人かいらっしゃって、実際Edgeの読み上げ機能は使ってみると結構音声の質も良いということもあったりするので、あれを特に普段画面が見えている状態の人だと便利に使うケースもあるのかなという気がしますね。

伊藤:そうですね。NVDAだと全文読みさせると画面がついてこなくて無理なんだと思って。やはり、あまりちゃんと見えていなくても画面を見たい、という欲求がありまして、Edgeだとそれがちゃんとスクロールされて読んでくれるので、そういう点で便利だなと思って時々使っています。

中根:なるほど。確かにそれはロービジョンの方もそうだし、あとは例えばディスレクシア、読みの障害のある方でも、やはり読まれている部分と表示されている部分が同期しているかを重視している人が結構多い印象があるので、その辺がやはりEdgeだとかなりニーズに合っているということですね。

伊藤:そうですね。

中根:ありがとうございます。

パソコンで使われているメーラー

100パーセント積み上げ横棒グラフ:パソコンで利用しているメーラー

中根:じゃあ、続いて「PCで使うメーラー」。

MyMailという、PC-Talkerと一緒に使うものが前提のものがやはりPC-Talkerを使っている人の中では多いということがありますね。

個人的な印象としては、ブラウザーで読んでいる人というのが思ったより少ないなという気がしました。というのは元々そのGmailみたいなのって、スクリーン・リーダーとブラウザーで使うのが大変だったんですけど、今だと、例えばNVDAとGmailとかだと、ちゃんとその意図されたような使い方をすると、例えば上下カーソルキーでメールの一覧の中を移動すると、選択したメールを普通に音声で自動的に読み上げてくれたりとかみたいなことも含めて、かなり使いやすいようにできたりするので、僕自身はGmailしか使っていないんだったらブラウザーだけあればいい、みたいなぐらいの感覚になっていたりしますが、実際には他のメール・サービスとかも併用していたりするので、Thunderbirdを使ったりするんですけども。

ということで、個人的な印象としては、思ったよりもブラウザーで読んでいる人少ないんだなという感じがしました。やはりPC-Talkerのユーザーが多いということもあって、47.37%がMyMailを使っているというような状況で、あとはOutlookが次に多いのかな。14.57%で、その次にThunderbirdというような感じなんですけども。

主に使われている支援技術とブラウザー

100パーセント積み上げ横棒グラフ:主に使用している支援技術ごとのWebブラウザーの利用状況(回答割合)

中根:続いてこれは、主に使う支援技術とブラウザーの組み合わせの集計ですね。

これは、PC-TalkerとNetReaderの組み合わせが多いですね。これはある意味予想通りです。

Internet Explorerを使っているという人が、基本的にJAWSとPC-Talkerのユーザーだけっぽいんですね。なんでかなと考えると、さっきの高橋さんの話じゃないんですけども、古いバージョンのJAWSしか持っていない人とかだと、IEが一番良いのは恐らくそうなんですね。

PC-Talkerもそういう意味でいうと、もし古いWindowsで古いPC-Talkerを使っていたりすると、やはりこれが一番良いということになるのかな、ということがあるかなと思いました。で、PC-Talkerの場合は、例えばWindows8からWindows10にバージョンアップすると、PC-Talkerそのものもバージョンアップしなきゃいけない。今までのサブスクになる前のライセンス体系なんです。そういったこともあって、OSのアップデートができていない人、あるいは意図的にしていない人とかだと、古いPC-Talkerを使っていたりするかなと思っていて、それでIEのユーザーが少し、数は少ないけどいたりするのかな、とは思いました。

主に使われている支援技術とメーラーの組み合わせ

100パーセント積み上げ横棒グラフ:主に使用している支援技術ごとのメーラーの利用状況(回答割合)

中根:次は「主に使う支援技術とメーラーの組み合わせ」。

これはPC-TalkerとMyMailの組み合わせがやはり多いですね。ただ、PC-Talkerを使っている人でもMyMailじゃない、という人も一定数いるのもちょっとおもしろいなと思いました。

スマートフォンで使われているプラットフォーム

100パーセント積み上げ横棒グラフ:スマートフォンの利用プラットフォーム

中根:では続いて、スマホ関係の話にいきます。

前回は、例えばVoiceOver使っているとかTalkBack使っているとか、そういうところから使っているOSを推測するという力技をやっていたんですけれども、これはさすがにどれだけ正確なのか。さすがにそこまでひどく間違っているわけではないけども、ちょっとそういうことがあったので、今回はパソコンのほうと同様に、使っているプラットフォームを、使っている端末の種類をそのまま聞くっていう設問を追加しました。

それで使っているプラットフォームというのを集計しました。確認するとiOSが220名、95.65%の人が使っている。これは複数回答なので100%になりませんけれども。Androidを使っている人は51名、22.17%。併用しているという人は44名で19.13%ですね。

iOSだけっていう人が73.91%です。Androidだけっていう人は、これは少なくて6人、2.61%ということで。やはりiOS優位というところがあり、一部Androidも併用している人もいると。

あと、今回新たに選択肢として去年の回答を考慮して、らくらくスマートフォンというのも追加したんです。これは、一定数いらっしゃいますけど数としてはかなり少ないというような結果になっていました。

ということで、高橋さんも伊藤さんもそれぞれ2人ともiPhone、iPadしか使っていない感じですか?

高橋:私はAndroidは普段使っていないです。一時期、楽天ミニを持って使おうとしたことがあるんですけど、なんかちょっとあまりにも小さすぎて、というか挫折しました。

中根:小さい端末というのが売りなんで、しょうがないですね、それは。

高橋:はい。すみません。1円だったので。

中根:はい、そうですね。僕も買いました、それは。伊藤さんはいかがですか?

伊藤:私は会社のスマホがAndroidなので。

中根:先ほどそうおっしゃっていましたね。

伊藤:TalkBackは使うこともあるんですけど、やはり何かショートカットとかがいまひとつ使いにくかったりして、やはりiPhoneのほうが使いやすいなという感じです。

中根:最初に使い始めたのはiPhoneでした?

伊藤:目が悪くなる前はずっとAndroidだったんですけど。

中根:そうなんですね。

伊藤:目が悪くなってからiPhoneに変えてという感じで。VoiceOverをiPhoneで覚えてという感じだったので。TalkBackは……切り替える前に試してみたことはあったんですが、昔のTalkBackは使い物にならなくて。それでiPhoneに変えたということがありましたけど。最近は結構、読みが良くなったなという感じはします。

中根:そうですよね。僕は、iPhoneのVoiceOverのほうが先にAndroidのTalkBackよりも市場に投入されたということもあって、僕は最初にiPhoneを使い始めて。TalkBackもそこそこ使えるらしいよっていう噂を聞いて試してみたけど、結構iPhoneのVoiceOverに慣れている身からすると、ちょっとこれは厳しいという印象だったんですが。

最近はかなり良くなったなという気がしていて。それこそさっきの話じゃないですけど、やることによってはAndroidのほうが楽にできるかも、みたいなこともあったりするようで。だんだんそこはTalkBackとかAndroidのほうも良くなってきているので、またそこに対する印象というのも徐々に変わってくるかもなという気はちょっとしますけど、現状ではやはりiPhoneのほうが使いやすいと思っているユーザーが多いんだろうなというのが表れている数字かなという気はしますね。

ちょっと面白いなと思ったのが、「スマホで使っているプラットフォームの年齢別」という集計があるんですが、ここでみると40代がiOSとAndroidを併用している人が多いという。若干ですけどね。そういう数値が出ています。これは単純に、好奇心と経済的その他の余裕とが兼ね備わった年代がこの辺なのかな、というような印象を勝手に受けましたけども。逆に若い人とかだとiPhoneが高すぎて、みたいなことがもしかしてあるのかもなというのも思ったりとか。その辺のことをもうちょっと「どうしてこうした選択をしているのか」みたいな話をじっくり聞けるといいなというようなことはちょっと思ったりしました。

スマートフォンで使われている支援技術

横棒グラフ:スマートフォンで使う支援技術(複数回答)

中根:次は「スマホで使っている支援技術」を複数選択してもらったというやつで、基本的にはやはりiOSのVoiceOverを使っている人が多いんですね。

複数回答なのでこれも合計は100%になりませんけど、iPhoneの211名、91.74%ということは圧倒的に使っている人が多いですね。一方AndroidのTalkBackのスクリーン・リーダーは全体でいうと19.13%ということで、ここでもiOSのほうがAndroidよりもユーザーが多いというのが明らかに出ているなという感じではあるんですけども。

iOSのズームとかの拡大機能とか、そういったものを使っている人が10%強、11%ぐらいですね。Androidのほうは同じところが3.04%ということで結構少ないという状況になっています。

ちなみに、さっきちょっと言いましたが、らくらくスマートフォンの読み上げ機能というのを挙げている方が4.35%と、10名いらっしゃいました。というような結果になっています。

スマートフォンで主に使われている支援技術

100パーセント積み上げ横棒グラフ:スマートフォンで主に利用している支援技術

中根:今の設問を単一選択にしたものですね。「主にスマホで使う技術」ということで選んでもらった結果です。これはやはりiOSのVoiceOverが一番多いなということで84.78%。これもやはりOSのシェアの結果と、あと今回全盲の人が多いというところがそのまま表れた数値になっているかなと思います。

スマートフォンでの支援技術の併用状況

中根:次が「iOSの支援技術の併用状況」で、iOSを利用している人が220名いましたと。その内で189名、85.91%の人がVoiceOverだけを使っています。使っている、というのは使っている支援技術としてVoiceOverだけを挙げているんです。

それから22名、10.00%の人がスクリーン・リーダーとロービジョン向けの支援技術の両方を選択している。それから3名、1.36%の人がロービジョン向け支援技術のみを選択しているという結果です。こうみると確実にロービジョンといえる人は25名で全体の11.4%とかになるんですが、実際には例えば必要なときだけVoiceOverを有効にして使っている。普段は画面を見ているロービジョンの人とかもいるだろうなという気がしていて。ここもなかなか、ここから見えるロービジョンっぽい人の数は実態とは解離しているのかなという気はしています。

次はAndroidに関しても同じ集計です。これは分母が51名ということで少ないんですが傾向としては同じで、80.39%の人がスクリーン・リーダーのみ。5.88%というと多そうですけど3名が併用です。4名の人、7.84%がロービジョン向けの支援技術のみを使っていると。そういう結果になっています。

スマートフォンでの点字ディスプレイの利用

100パーセント積み上げ横棒グラフ:スマートフォンでの点字ディスプレイ利用状況

中根:続いて、「スマホでの点字ディスプレイの利用」ということで。これはスマホを使っている人の全体の中で9.12%だけでした。PCのほうが32.39%でしたので、随分差があるなということなんですが。

これは単純な話でスマホを、特にiPhoneで点字ディスプレイを接続しても日本語があまりいい具合に表示されないということが一番大きなところで、実用性が低いというところですね。その一方でAndroidのほうは、サードパーティーのケージーエスという点字ディスプレイを作っているメーカーが出しているアプリとケージーエス社のハードウェアを一緒に使ったケースなんかだと、かなり正確な点字で読み、書くことができるんですね。というようなことで、使っている人はいるんだけども少ないね、というような状況だと思います。

スマート・ウォッチの利用状況

100パーセント積み上げ横棒グラフ:スマート・ウォッチの利用状況

中根:ここからがようやく新しい設問なんですね。「スマート・ウォッチの利用状況」というものです。利用率は全体の18.82%。スマホ利用者だけで見ると、つまりPCしか使っていない人を除いた分母でみた場合も20.87%、およそ21%の人がスマート・ウォッチを使っているという状況です。

僕自身はアップルウォッチとフィットビットを普段使っているという状況なんですけど。高橋さん伊藤さん、それぞれ。まず高橋さん、何かアップルウォッチとか、その手のものを使っていますか?

高橋:いえ、使っていないです。

中根:特に興味もないって感じですか。

高橋:腕に物がくっついているのが苦手で。腕時計もこっそり時間を見られるので便利なので持っているんですけど、腕にはめているのがウザくて、いつもカバンとかに入れている状態なので。スマート・ウォッチははめていられないんじゃないかと思っています。

中根:伊藤さん、いかがですか?

伊藤:私も持っていないです。ずっと買おうかなと思っていたんですけど、迷っている間にどんどん値上がりしそうな感じで買いそびれました。

中根:なるほど。ということで、3人いるうちの1人しか持っていない、使っていないということで。この結果よりは分母が3人だからあれですけど、この結果が21%ぐらいで納得の数字かなという気もちょっとしますね。

このあと出てきますが、一般の、特に視覚障害者だけに絞らずに調査した結果というのを探してみたら、2021年の1月に実施された調査があって。これで見るとスマホを持っている人の38%がスマート・ウォッチを持っているという結果でした。思ったよりも一般の人も少ないんだなと個人的な感想ですけれども。そこよりも半分ぐらいなんだということで、別にそれが多いとか少ないとか思わないんですけど、なるほどという感じはしました。

スマート・ウォッチの利用状況(年齢別)

積み上げ横棒グラフ:年齢別のスマート・ウォッチの利用状況(回答者数)

中根:次が「スマート・ウォッチの利用率(年齢別)」というやつがあって、これも面白いんですけど40代が多いんですね、割合としては。

ということで、さっきのAndroidとiOSの併用状況なんかもみると、やはり40代というのはそういう物にうっかり興味を持ってしまう、そういうおじさんおばさんが多いのかなという感じはしますけど。実際僕もそういう感じだったんで。登場したのが40代の頃だったという感じで。

スマート・ウォッチの利用状況(全盲・ロービジョンの別)

100パーセント積み上げ横棒グラフ:見え方別のスマート・ウォッチの利用状況(回答割合)

中根:スマート・ウォッチの利用状況で、全盲・ロービジョンで集計してみたんですけど、あまり大きな差はないかなという感じ。一応、数値的には全盲の人の利用率が19.91%、ロービジョンが13.4%ということで結構違うような印象もあるんですけれども、ただロービジョンの人のサンプルが少ないこととかも考えると、そこまで大きな違いではないという気がします。

ただ、全盲の人の場合は、アップルウォッチだったらVoiceOverがあるということが分かっていれば、あとは何か使いたい機能があるかどうかで単純に選べばいいのかなと思うんですけど、ロービジョンの人の場合だと、やはり見やすいか見づらいかということも関わってくるので、全盲の人より「買ってみよう」というハードルが高いのかもなということはちょっと思いました。

スマート・ウォッチの利用用途

横棒グラフ:スマート・ウォッチの用途

中根:スマート・ウォッチの利用用途ですけども、多いのが健康管理とか、それからスマホの通知の管理。あとキャッシュレス決済というのが4割ぐらいで、思ったより少ないなという気がしました。というのは、僕自身は「これは高級Suicaだ」と言い張っているぐらいアップルウォッチをほぼSuicaとしか使っていないという感じなので、キャッシュレス決済の……これが実際便利だと思っているので、キャッシュレス決済という人がもっと多いのかなというふうに思っていたのですけれども、そんなことはありませんでした。

一般のスマート・ウォッチの利用状況との比較

中根:この次に「スマート・ウォッチ(晴眼者との比較)」というスライドがあって、今参照した調査に関する情報が書いてあります。「2021年スマート・ウォッチに関する利用実態調査」。MMD研究所というところが2021年2月9日に発表した結果です。

これで見ると、さっき所有率のところを紹介しましたけれども、利用製品、アップル製が46.0%ということで半分いっていないんですね、実は。ですが、われわれの調査でのスマート・ウォッチでの利用製品を挙げてもらったのでいうと、ほぼアップル製なんですね。43人なんですが40名がアップル製品。あとは僕のやつですけど例えばフィットビットとか、あとガーミン、シャオミとか挙げている人もいましたけど、とにかくアップルウォッチの多さというのが一番、一般の調査との違いかと思いますが、これはある種当然で、ほかのものはVoiceOverみたいなものがないというところが一番でかいのかなと思います。

用途に関しても、こちらのMMD研究所のほうは上位の用途は歩数計と通知と心拍測定ということで、実はそこのところはあまり……心拍測定と歩数計って健康管理というふうにまとめちゃっていいのかなって気がするので、そこの部分の差というのは、われわれの調査の差とあまり変わらないなと。キャッシュレスも入っていないんだなというところで、ちょっと面白いなと思いました。

スキップ・リンクとは

中根:ここから先はWebの利用に関する設問の結果です。

まず「スキップ・リンクとは」というスライドがあって、スキップ・リンクって、われわれのWebの業界の人がよく使う言葉、アクセシビリティー系の人たちがよく使う言葉なので。ちょっと簡単に説明しておくと、ページの先頭にある「本文にジャンプ」というようなラベルがついているリンクですね。これを、ここでエンターキーを押すと本文にジャンプするはず、すると信じて押すリンクですね。これがスキップ・リンクというやつで。多くの場合は見た目には表示されていないと思うんですね、最初は。ただ、タブキーを1回押したりして、そこにフォーカスが当たると表示されるみたいな作りになっているページが多いかと思います。そういうリンクがあるページはスクリーン・リーダーを使ってアクセスすると、最初に「本文へジャンプ、リンク」みたいなことを読み上げるというような感じになっています。これスクリーン・リーダーを使っている人だと聞いたことある人が多いんじゃないかなと思います。

スキップ・リンクの利用状況

100パーセント積み上げ横棒グラフ:スキップ・リンクの利用状況

中根:そのスキップ・リンクの利用状況について聞きました。そうするとよく使うという人が33.06%、時々使うが41.30%ということで。足すと8割近くになるんですね。使わないという人が20.5%。

僕は個人的には一切使わないので、すごくびっくりしたのが率直な感想です。高橋さんは使うことありますか?

高橋:最初にこのリンクを見かけたときに「おお、いいものがあるじゃないか」と思って使ったんですけど、私のやり方が悪いのか、私の使っているスクリーン・リーダーとの相性が悪かったのか、全然本文に飛べないし、思ったように動作してくれなかったんです。そういう経験をして以来、使わなくなってしまったというのが実情です。

中根:たぶん僕も同じような理由で使っていない気がしますね。伊藤さん、使われることありますか?

伊藤:私も使わないです。自分で作ったサイトで「スキップ・リンク使えないし」と思ってつぶしたやつがあるんですけど、こんなに使われているんだったら戻したほうがいいのかな……。

中根:そうなんです。JBICT.netっていう変なサイトがあるんですけど、僕、そこのテンプレートからスキップ・リンクを消したんですよね。これ見て結構「ああ……」と思ったんですけど。これはやはり意外な感じがしますよね。

高橋:今はちゃんと飛べるんですかね?

中根:実装の仕方によるところがあって、あとスクリーン・リーダーとの組み合わせもあるかもしれないですね。なので、確実に飛べるって分かっていれば、使うことはありうるかなと思うんです。ちなみに「本文にジャンプ」っていうのが、その名の通り本文にジャンプする機能なんですけれども、これを使わないとするとどういうふうに本文の先頭にジャンプしていますか。

高橋:見出しとか、あとはJAWSだとRでリージョンっていうのかな、メインとか本文が書かれているところを探す機能、あと静的なテキストを探すとか、そういうコマンドを使ってなんとなく探している感じです。

中根:これ、ロービジョンの方だと本文の先頭を探すのが大変な場合とそうでない場合がある気がするんですけれども、そういうところで工夫されていること、伊藤さんはありますか?

伊藤:私はもうスクリーン・リーダーなので、高橋さんと同じように見出しでジャンプしちゃうんですけど、目で見るんだったら素直に見ていけばいいって感じかなと。だから、本文にジャンプをあえて使わなくても、スクロールして見ていっちゃうかって感じなんです。見ている方の使い方とか、その辺は伊原さんに伺うといいかも。

中根:ということですが、伊原さん。

伊原:スキップ・リンクは使わないですね。大体の場合、見出しでもう本文が見えているんですよね。普通の画面のサイズでブラウザーをそれなりのサイズにしているとか、スマートフォンでブラウザーを見ているときは大体、本文が見えているので、探す行為そのものをしているといえばしているのかもしれないですけど、もう目に入っている状態というのが正しい表現かなと思います。

中根:ありがとうございます。ここにいる人たちだと、使っている人たちの気持ちがあまり反映できないコメントになってしまいましたが、数値はそういうものを見せているので、なかなか興味深い結果でございます。

100パーセント積み上げ横棒グラフ:見え方別のスキップ・リンクの利用状況(回答割合)

中根:続いて、このスキップ・リンクの利用率に関して、全盲とロービジョンで違いがあるかを分析した結果です。

使わないっていう人が、全盲だと18.14%、ロービジョンだと32.56%。まあ、違いはありますねって感じで。見えている人はあまり使わなくても本文の先頭を見つけられる人が多いってことが……今の話を反映したような形であるのかなという気もします。一方で全盲の人は、要するに82%くらいは使っているということなので、これは本当に今までの考えをあらためねばって気持ちになっております。

伊原:そうですよね。どこでもよく使っているのかどうかはちょっと気になるところがあって。よく使う、よく訪れがちなサービス、Google、YouTubeとかFacebook……適当に今、多分にあるようなのを言ったんですけど、そういうところに実装されていて「どこを押したらどこにいくか分かっているから使う」みたいなケースだったら、使うところが限られていても「よく使う」になるんじゃないかなって思ったみたいな……推定? なんかそういうことだったりしないかなと思いました。

中根:それは僕も思っていて、スキップ・リンクがあれば必ず使うって人と、使う場合・使わない場合があるけどよくいくサイトでは必ず使うって人の両方が、必ず使うというか「よく使う」に入っているのかなって気はちょっとしています。なので「どういうサイトで使って、どういうサイトでは実は使わない」みたいな深掘りをしないと……これだけを見て「すっげえ使われている」って判断しちゃうのはまずいかなって気は確かにしますね。

音声読み上げボタンの利用状況

100パーセント積み上げ横棒グラフ:音声読み上げボタンの利用状況

中根:次は「音声読み上げボタンを使うかどうか」という質問です。特に公共系のサイトに多いんですけど、ページの先頭とかに「音声読み上げ」みたいなボタンがある場合をそこそこ見かけるんですよ。これを使うかどうかを聞いてみたということです。

まず全体で言うと「使わない」が71.26%。7割方「使わない」っていうんですよね。残りが「時々使う」とか「使う」って人なんですけれども、どちらかというと、やはりスクリーン・リーダーを使っている人は今更それを押して読み上げさせたいってニーズは少ないだろうなと、ある種予想通りかなって気がしています。あと、ロービジョンの場合でEdgeの読み上げ機能を使うケースもあるので、そういう人からしても、わざわざサイトに搭載されているものを必要とするケースが少ないのかな、という気がしています。

100パーセント積み上げ横棒グラフ:見え方別の音声読み上げボタンの利用状況(回答割合)

中根:次が、見え方の違いで差があるかどうかです。これ、ロービジョンの人がよく使っているかもしれないと思ったんですけど、ほぼないということで、あまり使われていないのかなという気がしています。

じゃあ必要ないかって言われると、全く必要ないとは言い切れない部分があります。視覚障害者というよりは、スクリーン・リーダーは使っていないけれど読むのが苦手な人とかが一定数いらっしゃるのは間違いないですから、そういう人たちが便利に使える機能であれば当然存在価値があると思うんです。ただ、視覚障害者の観点で言うとそこまで重要なものではないという気がします。

念のため聞いてみます。高橋さんは、この音声読み上げボタンを使ったことはありますか?

高橋:一度もないですね。

中根:ですよね。

高橋:すごくのそのそ読むんじゃないかなとか勝手な先入観もあって、考えてみたら今まで試してみようと思ったこともなかったです。

中根:やはり普段使っている、慣れ親しんだ音声で読み上げられるのが一番理解しやすいっていう……思い込みかもしれないけどそういう感覚は強いですもんね。

高橋:そうですね。

中根:伊藤さん、いかがですか?

伊藤:国税庁かどこかのサイトのを試そうとしたことあるんですけど、まず使い方が分からなくて挫折しました。

中根:なるほど。使い方が分からないのはまずいですよね。これはやはり、視覚障害者にはあまり使われていないと見るのがいいのかなと。使っている人ももちろんいるんですけれども、全体の傾向としては使われていないという感じですね。

文字サイズ変更ボタンの利用状況

100パーセント積み上げ横棒グラフ:文字サイズ変更ボタンの利用状況

中根:続いて「文字サイズ変更ボタンの利用」。文字を大きくするとか小さくするというボタンです。音声読み上げボタンと同じで、公共系のサイトでページの上のほうによく見られるものなんですけども、これの利用状況です。

全体で見ると「使わない」が90.28%。全盲の回答者が多い結果なので、そりゃ使わないよねって感じで、全体で見るとこうなるのは当然という気がします。

100パーセント積み上げ横棒グラフ:見え方別の文字サイズ変更ボタンの利用状況(回答割合)

中根:次が、全盲・ロービジョンで分けた場合ですけれども、全盲はほぼ使わない。ロービジョンは48.84%が使わない、半分くらいが使っている。時々使ったり、よく使ったりする人がいるってことなんですね。昔は拡大がうまくいかないケースがよくあって、あまり使われていない印象があったので、僕は思ったよりも使われているなって印象を持ったんです。

これは僕や高橋さんは特に話せることがない話題ですけど、伊藤さん、文字サイズ変更ボタンをご自身で使うとか周りに使っている人がいるとか、そういうことはありますか?

伊藤:私は使ったことがないし、周りの人もたぶんブラウザーの拡大機能で拡大しているんじゃないかなと思います。

中根:これが有効になってくるシーンがあまり思い浮かばないんですよね。それこそブラウザーの拡大で事足りちゃうとか、あるいはOS全体の拡大機能でなんとかなるとか、そういうケースが多いんじゃないかって気がするので、意外に多いなって印象ではあるんですね。

伊藤:昔のパソコン時代は、そういう機能があったほうがよかったとかあるんですかね。

中根:昔は、文字サイズがブラウザーのズームで変わらないページが今よりはたぶん多かったりして、そのときにこういった機能だったらちゃんと……ちゃんとかどうか分かんないけど、ある程度変わることはあったかもしれないです。

伊藤:その名残で今もそういうのを設置しているかもですね。

中根:そうですね。設置する側としてはたぶん……すごく悪い言い方をすると「やっている感」が出るという、「アクセシビリティーに取り組んでいますよ」って感じになるところがひとつ大きいと思うんです。実際にどれくらい使われているか見たときに、僕はもうちょっと使われていないものかと思ったんですけど、意外と使われているなって感想ですね。

伊原:私も立派に老眼になる年齢になってきたわけなんですけど、ロービジョンと「見えにくい」の境の差はあるのか、ないのかというところがあるんですが、ちょっと見えにくいみたいなときに、とりあえず押してみるっていう気持ちは分かりますっていう。

中根:なるほど。

伊原:まあ、ちゃんと動くんだったらとりあえず押してみるか、みたいなところはあるような気がします。というのと、ブラウザーの拡大機能を知らない人というのもいて、見えにくいけど、そういうの分かんないし、みたいな人がその明示的なボタンがあったら、まあ押すみたいなことはありそうです。というのと、あとブラウザーってズームしかできないんですよね。できないというと語弊が。文字サイズ変更がめちゃくちゃ奥にあるんですよね。

中根:そうですね。

伊原:ズームすると、代わりに画面が見切れちゃうわけなので、行を行ったり来たりみたいなことが起きたりとか、見える範囲を動かさなきゃいけなくなる場合があるんですけど、文字サイズだけ変更できれば、リフローできる、リフローできるというふうな言葉では思ってないと思うんですけど、レイアウトが変わらずに文字だけ大きくなるので、そのほうが見やすいです、ということがあるのかなと思いますね。

中根:だとすると、あとはどれくらいちゃんと、意図通りに文字サイズが変わるようにちゃんと作られているかっていうところが……前にある方が調べたときには、あまり機能しないもののほうが多いっていうような結論に至っていたような気がするんですけど、最近その辺がどうなっているのかちょっと興味がありますね。

伊原:そうですね。そうなるサイトが増えたのかな、分かんないけど。

中根:だといいですけどね。

伊原:しかもリフローできないっていうサイトがよくありましたね。なので、一定その、ほかのことを試すよりも、目の前にあるから押してみるケースとかがあり得るというのがなんか、それはそれでありそうという気持ちです。

中根:確かにそうですね。ありがとうございます。ちなみに、面白いという言い方もどうかと思うんですけど、全盲・ロービジョンと分けたときにですね、全盲で使っていると回答している人が2人いらっしゃるんですね、これは恐らくですけれども、もしかしたら回答するときにうっかり間違ってチェックしちゃった、ということが当然有り得るんですけれども、可能性としては、われわれの推測でスクリーン・リーダーしか使ってなくて、拡大とか使ってないから全盲だというふうに分類されている方が、実際には基本的にはスクリーン・リーダーを使っているんだけど、時々画面を見られるぐらいのロービジョンの方っていう可能性は有り得るなということで、これはちょっと不自然な数字になっていますけども、そういうことも有り得るのかなというふうに思っています。

アクセシビリティー・オーバーレイとは

中根:最後の設問に関連して「アクセシビリティー・オーバーレイ」という話をします。

アクセシビリティー・オーバーレイって定義がちょっと難しいんですけれども、サイト制作者が導入するサービスなんですね。例えばなんとか市役所とか、そういうところの公共機関が多いような印象があるんですが、そういったサイトで導入されているサービスです。

その導入されているサービスの利用者、利用登録をした人が「自分の見やすい表示はこうですよ」みたいなのをサービスに対して登録、設定するんですね。そうすると、アクセシビリティー・オーバーレイと呼ばれるサービスを導入しているWebサイトにアクセスしたときに、この登録した好みに合わせて表示が変わったりとか、というような機能がある、提供する、こういったものを一般的に最近、アクセシビリティー・オーバーレイというふうに呼ばれることが多いもの、だというふうに僕は認識しているんですけど、これ、伊原さん、正しそうですか。今ので、説明として。

伊原:はい、そうだと思います。

中根:ありがとうございます。ということなんですが、一つには、自分が今使っているのが、いわゆるアクセシビリティー・オーバーレイの機能なのかどうか、とかっていうのも明確に意識して使えているユーザーってどれくらいいるのかっていうのを、これ結構難しいかもな、というのを実は、調査を始めてから思ったりしましたが、そんなことはさておき、次のスライドに行くと、アクセシビリティー・オーバーレイについて聞いた結果があります。

アクセシビリティー・オーバーレイの利用状況

100パーセント積み上げ横棒グラフ:アクセシビリティー・オーバーレイの利用状況

中根:まず、認知っていう意味でいうと、初めてそういう言葉を聞いたっていう人が54.84%ということで、認知率はそんなに高くないなという感じがあります。知っていて使っているという人は2.42%、知っていて使っていないという人は10.89%というような結果になっていて、残りは、聞いたことがあるけどよく分からない人ですね。

なので、もしかすると知らないって言っている人も実際にはアクセシビリティー・オーバーレイに分類されるようなものを何かしら触れたことがあったり、使っていたりということもあるのかもしれないです。ただ、設問のほうでは具体的なサービスとしてFACIL'iti(ファシリティー)というものがありますよっていうようなことで、質問を出していますので、そこで聞いたことがないなっていうような感じで答えていただいたのかなとは思っています。ということで、利用率は非常に低いというのが現状です。

100パーセント積み上げ横棒グラフ:見え方別のアクセシビリティー・オーバーレイの利用状況(回答割合)

中根:「アクセシビリティー・オーバーレイの使っている、使っていない、全盲、ロービジョン」っていうのが次のスライドなんですけれども、実はこれが差はあまりないんですね。全盲の人が使っているという人がいるっていうのは、さっきの文字サイズ変更ボタンと同じような人数で、実際にはわれわれの推測では全盲になっているけども、実際にはロービジョンの方かもしれないということがあるのかなと思っています。

ということなんですが、これアクセシビリティー・オーバーレイってこの調査までになんか耳にしたこと、話題を聞いたこととかってありましたか。伊藤さん、まず何かご感想とか。

伊藤:私が思っているのと同じものかどうかちょっと分からないんですけど、内閣府かなんかのサービスで、そういうのやりましたみたいなのを見たのがそうかな。あの、ブラウザー上で文字のサイズとか色の反転とかそういうのを設定する……。

中根:あ、そうですね。

伊藤:1回試してみたんですけど、やはり設定が難しいですね。なんかそのサイトのためにそれを設定しなきゃいけないの、っていうのが結構ストレスで、だったら自分のiPhoneの機能でそのまま使えたほうがいいかなという印象ですね。その時は。

中根:ありがとうございます。高橋さん、この調査までに、こういうサービスについて聞いたことってありましたか?

高橋:いや、全くなかったです。ただ、公共のWebサイトなんかで、さっきのスキップリンクもですし、文字を大きくするとか配色を変える、みたいなのも結構見かけるなと思ってはいて、ウェブサイト側のそういう仕掛けって本当に使われているのかなっていつも思っていたっていうのはありますね。

中根:ありがとうございます。アクセシビリティー・オーバーレイは僕が知る限りでは、基本的には、ある程度見える人にとって使いやすい、見せ方とかっていうところにフォーカスしているものが多いと思うので、そういった意味でこの調査、全盲の方の回答者が多いので、使ってないとか知らないって人が多い部分もあるのかなとは思うんですけど、やはり全体として見て、そんなに認知度が高いわけではないのかなっていう気はします。

ということで、用意したスライドは以上です。ご質問とかがあれば回答していきたいと思うんですけど。

質疑応答

パソコン、スマートフォンの用途に関する質問

パソコン、スマートフォンの用途の質問がされなかったようですが、ここ数年の用途の変化が気になりますね。何か考察されていますか。

中根:実は、公式には何一つしていません。

スマート・ウォッチに関しては用途の質問をしたわけですけれども、じゃあ、パソコンとスマートフォンについてしなくていいのかという議論は、実は準備の段階でありました。なんですけど、これ、選択肢を作るといっても超大変だなということで諦めた、という経緯があるんですが、ここでお話しできることとすると、ここの今いる3人がパソコンとスマートフォンの使いわけみたいなのが、ここ数年で変化したことがあるのか、どうかっていうところはちょっと簡単に紹介できるかなと思うんですけど、高橋さんいかがですか?

高橋:まず、ここ4、5年で、スマホの使い方がすごい大きく変わってきたのが、OCRとか視覚代行機器って言うんですかね、としての役割がすごく大きくなってきているんじゃないかな。たぶん、ほぼほぼたくさんの視覚障害、特に全盲の障害者のスマホの中には、なにがしかのOCRアプリとか、画像認識アプリとかそんなのが入っているんじゃないかなっていうふうに思います。

あともう一つはお金の管理って言うんですか、電子マネーとかの代わりにスマホを使うというのも、すごく一般的になってきているんじゃないかなと思います。私たちは今まで残額であっても、なんであっても、最初は紙でしか分からなかった。だんだんWebサイトにいけば分かるようになって、それでもすごくうれしかったのが、今もう、スマホで通知とか、ちょっとそこをタップするだけで、今の残額とかどのぐらい、いつ使ったのかっていうことが見られるようになってきたりとか、その辺りはものすごく状況が変わってきていると思うので、スマホの使われ方もすごく変化しているんじゃないかなと思います。

中根:伊藤さん、いかがですか?

伊藤:プライベートではやはりスマホがメインという感じですね。文章を書くときはパソコンのほうが便利なのでパソコンで、という感じです。文章聞くのも結構スマホで聞いていることが多くて。仕事でもPDFなんかをNVDAで聞くよりは、iPadのVoiceOverで読ませたほうが手っ取り早いことも多いので、結構使っていますね。

中根:僕も高橋さんと、そういう意味でいうと同じようなところがあって、視覚支援と言われる分野のものはスマホがすごく発展してきている、進歩してきているところなので、OCRであったりとか、最近ですと信号の色の識別だったりとか、あとは視覚支援じゃないですけど、普通にグーグルマップとかナビタイムとかのナビ系、それから乗り換え案内とか、要するに出先で使うものは昔パソコンで出かける前に確認していたものが、今、出先で使えるようになって、パソコンでやらなくなっているというところはあるかなと思いますね。

あとは結構、物によるっていうところがあって、複雑なWebを使うよりもシンプルなスマホアプリを使ったほうが楽っていうケースがやはりあるような気がしていて、その結果として、別にパソコンでもできるんだけどスマホだよね、ということはあるかなと思うんです。ただ、これは結構、視覚障害者とかあまり関係ないかなと思っていて、例えばNetflixとかって、別にブラウザーでも見られるけど、たぶん多くの人はアプリで見ているんじゃないかなって気がするし、そう言うような事はあるのかなと思っていて。もともとは、なんでもかんでも出来ることはパソコンでやって、どうしようもない時だけスマホって感じだったのが、段々そこのバランスというのが変わってきているかな、という感覚は個人的にはありますね。

ブラウザーやOSの拡大縮小機能についての質問

ブラウザーやOSの拡大縮小機能は、視覚障害の方々の常識の機能でしょうか。どこまでそういった機能の啓発がされているか知りたいです。

中根:これは、スクリーン・リーダーの使い方みたいなところが、どれくらい……例えば、さっきの「見出しを探す」みたいな機能をどれだけ知っているかみたいなところもそうなんですけど、結構やはり、知っている、知らないというのは、人によって差が大きいのかなという気がするんですけれども、特にこの今出ている拡大とか、ブラウザーの文字サイズの変更機能とか、ロービジョンの方向けの機能ということになると思うんですけど、伊藤さん、認知度って、どんな印象ですか?

伊藤:知らない方は知らないかもしれないですね。でもとりあえず、スマホ、ピンチ、どっちでしたっけ、ピンチインでしたっけ、ピンチアウトでしたっけ。指でぎゅーっと広げて大きくするみたいなのは、普通に皆さん知っているんじゃないかな、という感じはするんですが、どうでしょう。あとは、文字サイズの変更まではご存じない方もいらっしゃるかもしれません。

中根:やはり、こういう物を使うと便利だよっていう情報を、もっと積極的に発信していかなきゃな、というのは、実はこのJBICTという活動の中でも取り組まなきゃいけない事だなと思っていたりはするんですけれども。なるべくそういう物を知って、便利に使える人が増えるといいな、というところは、たぶん、全盲の人もロービジョンの人も同じかなという感じですかね。

伊藤:そうですね。

音声入力や音声での操作に関する質問

今回の調査と離れてしまい恐縮ですが、音声入力や音声での操作が、iOSやWindows10や、Microsoft Officeでも増えてきているような気がします。この辺りの機能を活用されるという事はあまりないですか。

中根:音声入力ですね。僕自身は、1人でいる時、周りに誰もいないときは、音声入力でちゃちゃっとやることは時々ありますけど、そんなに多くないかな、という気がしますね。高橋さんはどうですか?

高橋:私は、音声入力で文章を作る事は、全くと言っていいくらいないと思います。ただ、その音声認識機能は、スマホのカメラに映った文字を読み上げるアプリへのショートカットをSIRIに登録して、SIRIに「これを読んで」と言うと、スマホがさらさらさらっと目の前にあるものを読んでくれる、みたいな設定をしていたりはするので、そういった、声でコマンドを出すということは、やってはいます。

中根:伊藤さんはいかがですか?

伊藤:家族とか、もう気を使わなくていい人の場合には、音声入力でそのまんま送っちゃったりしますね。ただ、結構誤変換があったりすると、直す方が面倒くさいので、なので時と場合によるという感じです。

中根:たぶんこの辺は、見えている人と見えてない人と、あまり変わらないのかなって気がしますね。感覚的にはね。

回答に用いられたブラウザーについて

アンケートに答えたブラウザーも今後調べると面白いかもしれないと思いました。

中根:これ、確かに、アンケートに最後にアクセスしたときに使われるブラウザーの情報を取るというのは、やろうと思えばできることなので、やってもいいのかなとは思います。で、実際冒頭で紹介したWebAIMの調査ではやっているんですね。なので、検討はしたいなとは思うんですけど、実際には結構正確に取るのは難しかったり。例えば、たぶんNetReaderとか取れないような気がするので、その辺、技術的な難易度と、あとはどれぐらい正確な情報が取れるのかといったところの兼ね合いで、ちょっと次回検討してみたいと思います。ありがとうございます。

クロージング

中根:じゃあ、ちょっと、一言ずつ。最後、簡単に感想、その他言って、いったん公式には締めたいと思います。ということで、まず伊藤さんから何か一言お願いします。

伊藤:今日は、スキップ・リンクの衝撃が結構あったのと、あとは、使わないんじゃないかと思っていた機能も結構使われているということで、やはり思い込みはいけないんだな、と改めて感じました。ありがとうございました。

中根:ありがとうございます。じゃあ、高橋さん。

高橋:私は、スマホとパソコンを併用している人がやはりすごく多いっていうところで、どっちも上手に生活に生かしながら、というか、なくてはならないものになっているんだろうなっていうことを、改めて痛感しました。以上です。

中根:ありがとうございます。伊原さん、お願いします。

伊原:スキップ・リンク、衝撃ですね。もう少し確認していきたいきっかけはもらったなってのはあります。あともう1個、スマートフォンの用途の話は、結構お伺いしていて確かにな、って思ったしスマートフォンって小さい画面に合わせるとシンプルになるので使いやすくなるみたいなところが、誰にとってもそうみたいなところはやはりそうなんだな、っていうふうなところもお伺いしていて思いました。今日は勉強になりました。ありがとうございます。

中根:はい、ありがとうございます。

最後、僕も一言ですけれども、本当に思い込みは良くないなっていうのは、本当にそう思いました。特にスキップ・リンクですけれども、やはり調査結果を集計していて一番びっくりしたってのはこれなんですね、正直なところ。今まで僕自身、いらない、いらないって結構声高に言ってきてしまったところがあったので、だいぶ反省しましたし、やはり実態をちゃんとつかむっていうことをして、当事者が当事者の声を届けるって活動を僕たちは目指しているので、そこをしっかりやっていければな、というふうに思っています。

という感じですかね。冒頭にも言いましたけど、若い人へのリーチができてないっていう問題があって。これをちゃんと次回以降改善して、もうちょっと実態に合った結果になるといいな、って。あと、ロービジョンの方ですね。というようなところをちゃんとリーチして、実態に合った結果になるといいな、というふうなことも考えています。

で、これは定点観測的に続けていきますので、また来年も今のところやる予定でおります。ということで、また注目していただければなというふうに思います。

だいぶ時間が延びてしまいましたけども、ご参加いただいた皆さま、それからUDトークの編集にご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。いったんこれで終わりにしたいと思います。ありがとうございます。

謝辞

このレポートは、ブラインドライターズによるテキスト起こし原稿を基に作製しました。

テキスト起こしに当たっては、このイベントにカンパ枠で参加してくださった皆さんからお預かりした資金を活用させていただきました。ここに改めてお礼申し上げます。